マーケティングの超必殺技講座「仮説こそがマーケティングの第一歩」

大机に構える桂山と、その向かいに座る徳島、田中、アイちゃんの4人。

田中のインフルエンサー・マーケティングとコンテンツ・マーケティングが不発に終わったものの、プロジェクトは仕切り直しの上、再度スタートを切ろうとしていた。

運命のヒアリングが今、始まる――。

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さて、葛山社長、事業の体制や販路について、あらためて伺っても良いでしょうか。

はい。我々は父が30年前に創業して以来、幼稚園や介護施設などのユニフォームを受託・製造してきました。

営業やデザインといった企画機能は他社がやっていて、うちは二次請けとして製造に専念しています。発注元が用意した発注書に沿ってうちでサンプルを作り、何度かフィードバックを受けて、OKが出たら製造に入ります。

縫製やプリントをメインにラインを組んでいて、刺繍など対応できない工程についてはパートナー企業に外注して加工してもらっています。

ユニフォームの良いところは、アパレル分野の中でも受注が安定していることです。例えば幼稚園は毎年大体決まった量の発注量となるため、仕事の落ち着いている閑散期にも、ある程度見込みで製造を進めておくことができます。

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つまり、二次請けがメインで、エンドユーザーとの接点はないということですよね。

そうなんです。現在パートを含めて従業員は30名ですが、営業担当、ウェブ担当、総務会計担当を除いて、27人が生産周りに従事しています。

このため今のように大手取引先数社からの発注が止まってしまうと、一気に状況が悪くなります。

ウェブ担当の者が一般向けに発注フォームを作ってくれているのですが、なかなか問い合わせにすら結びついていないのが現状です。

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ユニット社の強みをうかがっても良いですか?

縫製を始めとして、技術力の高さには自信があります。私立の幼稚園さんなどからは高いクオリティが求められることがあるのですが、他社が音を上げたような案件もやりきって、現在も継続的にご発注をいただいています。

生産管理にも優秀な人間がいて、納期を遅らせたことがほとんどないのも自慢です。

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現実的な問題はいったん置いておいて、桂山さんはユニット社をどういう会社にしていきたいと思っていますか?

ううん、そうですね。今回のように数社からの引き上げにあっただけで、こんなにも会社がぐらつくことになるとは思いませんでした。それくらい今まで事業は不思議と安定していたんです。根本には、父の他社との信頼関係があったのだと思います。

けれど、いまの状況に立たされて、個人の信頼に依存する危うさを思い知りました。

僕が小学生になる頃にはもうこの会社があって、この会社とともに僕は生きてきたし、従業員のみなさんも家族同然になっています。

僕はこの会社を存続させていきたいと思っています。大きく成長しなくても良い。高価な社用車もいらない。ただ、職人のみなさんが今まで通り誇りを持てる仕事に打ち込める環境を維持していきたいと思っています。

桂山社長へのヒアリングを終えた3人は、ユニット社近くの喫茶店で作戦会議を立てていた。

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「大きく成長しなくても良い」か。何だか張り合いがないなぁ。

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そんなことないぞ。大きな成長を望まないということは、スケーラブルじゃない事業を選べるということだ。

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スケーラブルじゃない事業…?

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大企業は、大きな成長が見込める事業にしか基本的には参入しない。5,000人の従業員を抱える企業が、大成功しても2,000万円くらいの売上にしかならないようなビジネスを始めたって仕方がないのは分かるよな。

つまり大資本を持った大企業と直接対決する必要のない、ニッチな市場を狙いにいっても良いわけだ。ニッチ市場をどう攻略していくか。これはこれで楽しいテーマだと思わないか?

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ううん、確かに!

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社長や従業員の方々のモチベーションがどこにあるのかを押さえるのはすごく大事なことだ。ビジネス的に成功しそうな提案ができたとしても、実際に動いてくれる人たちがやりたいことと反していたら誰も幸せになれない。

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確かに! みんなが張り切って取り組めるようなプランを練りたいですね!

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ああ。そして次に取りかかりたいのが、田中が打ったインフルエンサー・マーケティングとコンテンツ・マーケティングのより深い分析だ。

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分析、ですか…?

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ああ。田中が作った資料に、ユニット社ウェブサイトへのクリック数とCTRを追加するとこうなる。

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CTRというのはClick Through Rateの略で、上の表ではページを見た人の何割くらいがリンクをクリックしてユニット社のウェブサイトを見たかを表している。

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ずいぶんと記事によってCTRに差がありますね。しかもたくさん見られている記事のCTRが高いとは限らない…。

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そうなんだ。インフルエンサー・マーケティングでCTRの高かった2人の記事を抜粋すると、なるほどと思わされる。

熊本復興のボランティアに行ったときには、ユニフォームが大きな役割を果たしてくれました。私がへこたれたら、他のメンバーまで被災者の方々から信頼を失ってしまう。そう思うと不思議と活力が次から次に、溢れてきたんです。

みなさんご存知の通り、私の本業は看護師です。色々な経験を積みたくて今まで2度転職を重ねてきましたが、新卒でお世話になった大学病院には今でも感謝の気持ちでいっぱいです。

(中略)

その病院では教育担当の先輩看護師さんたちがアンズのワッペンを白衣に付けていて、新人看護師はいつでもその教育担当の先輩にヘルプを求めても良いことになっていました。

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すごい、どちらも実感がこもっていますね!

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モデルや読者モデルと言ったらちゃらちゃらしている印象を持たれることもある。実際に中にはそういう人もいるけど、実はすごく真面目で一生懸命な人が多いんだ。読モはみんな本業をやりつつモデル活動もしているから、365日仕事やってる仕事人間みたいな人ばかりなんだよ。

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どちらもユニフォームが持つ特有の効果を語ってくれている。

そしてこの傾向はコンテンツ・マーケティングの記事にも表れている。

  • デザインの力でV字回復? デザインによるチームビルディング事例
  • 思わず入部したくなる、かわいいユニフォームデザイン10選

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ユニフォームで組織の連携を厚くするとか、ユニフォームで教育制度を整えるとか、ユニフォームの力で部員を増やしたりとか、単純にユニフォームを作ることより「それによって付加価値をどうやって生むか」に関心が持たれているようですね。

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そう読み取れるね。ただユニフォームを作るだけなら、業者に発注すればできてしまう。

一方で、継続的にコストがかかり続けるユニフォームを、組織の資源としてうまく活用していきたいというニーズが世の中にはあるかもしれない。

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ユニフォームを基点としたコンサルティング、か。

なんだか労働集約的な臭いがしますね。

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ああ、そこがまた桂山さんの要望にもフィットしそうだと思わないか?

クライアントから要望を吸い上げてコンサル提案してとやっていたら受注までに時間がかかるし、何よりコンサル提案できるような営業チームを作り上げるのは簡単じゃない。

規模の経済が働きにくいが、他社が模倣しにくい。そんなビジネスモデルを組み立てられるかもしれない。

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良いですね! 何だかプロジェクトの方向性が見えてきたぞ!

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よし、今日はもう遅い。俺の方でも準備を進めたいことがあるから、続きは明日の朝話そう。

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はい、僕の方でもプランをまとめておきます!

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あ、私、工場を覗いて来ても良いですか?

昔から工場見学とか大好きなんです。桂山社長も良いって言ってました!

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ああ、あんまりジャマにはならないようにな。

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はーい!


まとめ読みしたい、マーケティングの超必殺技講座シリーズ

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